現れたのは息あがる一団。

ナツメ、ノん、テん。走ってきたのだろうか。

笑みとあがる息がミスマッチに部屋にあがる。

寝ていた僕は起き上がり

走ってきたの。と聞いた。


何もかもがそのまま

一切の準備もない即席の部屋。

そこへ始まるコト。

集めた石の多さ、それは空き缶に入れられ

持ち上げる時の重さ。

ガキ商店で売る品物をつくるのだという動機で

僕は欠席した前日の川べりの石拾い。

それから絵具で塗って、マグネットを付けてという

燦燦たる出来上がりが既にホワイトボードに貼ってある。

加工場のタイムカード掲示板であったのが、今や

オドルイカの奪取に遭い、

勤務時刻を記した小さな黄色の紙は隅の方にまとめてある。

これは静かな迷惑であり、勤労への挑戦である。


居並ぶ彩の力作に目を通しつつ

今日の缶缶から溢れるのは、拾ってきたままの石。

昨日の残りというのか、裸の丸み

もしくは角ばり、ジャラジャラと畳に開け

この誘惑というのか、素材の肌と

固い重りのそれぞれに目を移す我々。

勿論それに何かを塗るでもなくすでに

出来上がっている質感を味わう。

それで、ここから果たして何ができるのか。と

思いつきがどこに出るか

しばし見つめ尽くして一巡して

諦めた頃の風に乗って、少し手を動かす。



ある色を使い

混ぜ

石肌を覆っていく。

やや酸欠を誘うような

石の皮膚呼吸を覆うような膜を

厚く薄く乗せる作業。

それは木板や紙には感じない、

感覚。

あまりに人工でない均一でない

表面や凹凸のあるままが

そのままでいい感じ。

そして逆をいえば

人工の均一の馴らされた面にしか

何かをつくれないという皮肉

昔artを辞書で引いて、人工と出たことを思い出す。



全面に塗ろうとして

片面乾くのを待てずに

もうさかさにしちゃって

なんか絵具もこすれて

完成しきらないやつ。



ナツメが発見するマーブリング技法

石の肌で絵の具を交ぜ合わせ

まざりきらないマーブル模様を

そのままに乾かしていく

新しい大理石か

潤いの光沢はやがてマットになり

どこから来た石か

エメラルドグリーン



イト母は緑の豆

ふちに小さく黒を差し

丁度よい形を

ほどよい厚まりの塗り

もしくは白塗りの面

コロン丸々とした表情は

柔に端正に

近くか遠くかを見つめる。



グルーガンは何を打つのか。

電源コードから熱を引き、

粘着性の糊を熱々に練り出す。

はじめ、それは石とマグネットを固定した。

次第に我々が見つけたのは、

その糊そのものを形にする、冷やして

固まったそれを素材にするという方法。

第一発見者はナツメだろう。

何もないところに絞り出し、

自然広がった粘度がそのまま固まってはがす。

マーブルチョコぐらいの丸みである。



落とし所は材質を選ぶ。綺麗にはがせる

ツルツル面、缶缶のフタとか。

そのコツを先輩に教わる。

丸を描き、ドーナツをつくる。

嗚呼、これは便座だ。



気付いた手前、つくらねばならない。

便器を

フタに適した円盤を手に入れ、

貝箱から、程よいサイズのを取り出し、

その上に便座、フタは開けた形で

グルーガンで固定。



それを台座石に据えて、

いやあ、立派なTOTO感。

満足。



どうやってつくったのか、噴水のように

吹き上がるまま固まったようなオブジェ

それは誰がつくった。



ビスコの男の子切り抜いて石に貼ったり

テんはおでん型の縦長石重ね。

磁石の位置を調整しないと、

うまくつかない。



イトは次々に彩色、もしくは

未だ磁石なしの石たちに

ようやくグルーガンで完成を

授けるという連続。



ノんはこれまたよい景色を並べる。

石に手を加えず、その形を見て

タイトルをつけ、ダンボールの台紙に背景を描く。

そのパッケージが積み重なっていく。



大きなハート、カクカクハート

新米夫婦、米。

階段、きのこ。

桜の花びら。



その見立てる感覚は素晴らしい。

次々に触れあって、当たったり

掛かったり繋がるどこかへ向けて

知っているかたちと

知らないかたちを結ぶ

あたらしさになる。