加工場が忙しい。

100本超えのピクルスを脱気にかけたのが
もう夕方も遅かったから、洗いものや
片付けにもテンヤワンヤで、深まる宵闇。

幸い、参加者の多くが呼応するように
5時半に間に合わず、
6時半頃だろうか。ようやく
それでも一足早く抜けて、
エプロンを脱ぎ捨てた。

お待たせいたしました。

ハルキミチルも登場し、
今日は色紙を使おうと
贅沢なダイソーの両面色折り紙と、
片面色折り紙。
これをやぶって貼ってみたらいいんじゃないか。
破れた縁の薄ら白かったり裏色だったりする
優しいギザギザがいい眺めじゃないかと
そう思ったのだけれど、
誰も乗ってこない。

おーい、船が出てるぞ。
俺しか乗ってないぞ。

そう来たら、さして気にせず
自分で楽しめばいい。
そういう背中を見て
そう自然に誰か、
誰もついてこない。

おーい、実は淋しいんだよと
背中が喋ってくれたらいいのに。

勿論無理にとは言いませんから
これはこれ
野生のきびしさ
力なきものには相応の反応、もしくは
無反応があるわけです。

ナツメ母は国旗つくってるの?と言って
世界国旗図鑑というそそられる一冊を持って来る。
ナツメは偶然に似た旗を見つけ
各ページ各国の首都を音読しながら
ページをめくる。

かと言って国旗ブームは到来せず、
机のまわりで手持ち無沙汰な人々が
ごろつきのようになっている。
それを横目に諦念で持って
目前の色紙と遊ぶ主催者は、
焦りが墓穴を掘るだろうと平静に努めていたが
その平静が何かを解決する気配はなかった。

ノん母がそこに舟を出す。
踊る棚に素材を見つけ
袋に入った、ケースに入ったたくさんのビーズが
引き出され、そこから始まる。
糸を探し当て、通す順番を、
と、ビーズの穴が大きい。糸が細い。
そんじょそこらの結び目では抜けてしまう。
ハルキに依頼されたデカ結び。
何度も何度も結んで結んで、
ミチルのもそうだ。
ようやくビーズの列を受け止めるサイズになった所に
順々に通す。
通すハルキから頼まれるのは
ケースから好みのビーズを選り出す仕事。
半透明の宝石系を指定して、ここに出してくれと。
カットされた石の形はもちろん、
たくさんあるアルファベット形ビーズの中からも
半透明のタイプをつまみ出す。
色は特に問わないと言う。

ミチルは細長い小さなビーズを選び、
しかし糸が通らない、と小さな指で細かい作業。
通す時、指の先にどれぐらい余らせて持つか。
うっかりジャラーッとこぼしたりしながら
着々と並べると、それを引き歩く。
ペットの散歩のように
糸の端を持って畳の上をシャラシャラと
一列のビーズ達が通る。
そうか、そういうスタイルもあるんだね。

繋がった一列を輪っかにし、
結んでくれとハルキ。
ブレスレットは色々に光を通す石の輝き
誇らしげな身ぶりと
次はお母さんのを作る。
同様のチョイスでもう一輪
サイズはどれぐらいだろうと気にしながら
結んでおくれと頼まれる。
台所のお母さんの所へ、
結局はじめにつくった方を贈ったそうだ。

ナツメテんノんの動向を追いきれていない。
頭が回っていなかっただろうか。
いずれにせよ、気の回らないまま
夕飯に突入したであろうことを
すみませんと言いたい。

そういう行き届かない視野は
どこか意識しながら
身体ひとつの成り行きにまかせて
なすすべがないという事がおおい。
ごめんよ、今そこへ行かねばならないのだけど
今ここに居なければいけないという、
ほんの机のこちら側とあちら側で
もどかしく遠く感じられることもある。
側にいて声をかけたいのだが、
そこを気張ってもいけない、
無理をしてもどうにもならない。
次の機会に恵まれたなら、いち早くそこへ行こう。
時に新しさに気を掛けて、見知った所を慣れた風にあと回しにしてしまうことがある。
届く声に応えることに忙しく、待つ息を拾えないことがある。
この手足が触れたところで何が生まれるか知らない。
触れなかったところで何か生まれるにちがいない。
ただ居合わせたい機会がこの数畳の内に
いくつもあるという有難さを
今大事にしようと思う。