昼から行くと言って、
時間を決めぬまま居た確信犯は
案の定少し遅れて家を出る前、
スナックママから電話が入り
皆が待っているよと聞かされる。

こうも中途半端な催しはいけないと
我に帰りながら
朝はゆっくりが性に合う。

ガレージ横にバイクを停めると
いつものwildメンバーが出迎え
どれくらい待ったのか。
ごめんよ、さあ中へ。

しかし木が足りない。板が。
新たなお客さんも招き入れ、
その木工から始まる午後。
道先へ出て、大勢を引きつれて
一本のノコギリと数枚のサンドペーパー
切りたがるテン。
ぶ厚い板。
代わるミコ。
俺もやる。
半分で代われとテン。
焦るノコ。グワんとしなる

ペーパーはイトとハルカか
人数分あればいい。
しかし人が多い、7枚か
チワが1枚持ってるから、
あと何枚だ。

積み上がるぶ厚い板。
せっせとペーパーがけ部隊。忙しそうだ。
そう全面かけてあげて、ソゲささるから。
これで足りるかな。
待って、もうちょっと。。
イトが仕上げを急ぐ。

ようやく、ようやく
何かが始まろうか、部屋に帰ろう。
矢継ぎ早の作業に
脳みそが忙しなく揺れる。
ほとんど動いていないかもしれない。
家事をやり過ぎて頭が乳酸でいっぱいになるような
そういう少し手前の繁忙感。

やり繰りの混雑と混沌は治まらず
室内の人数は机を埋める。
絵の具と筆の不足。
何を描いてもいいという
無縛りは得てしてひとつの縛りになる。
引かれた通路が、道筋の限定と引き換えに
方向を展望するように、
無地の広間は道筋に欠ける。
移動の手掛かりが足りなければ
内燃機関は新しい材に行き着かず
新しい火を燃やせぬことがおおい。
それは自然に繰り返されるふるいであり
場合によって、逆算され工夫される
点である。

果たしてそれらは
一長一短であり
しかし先読みにとらわれ、行為を手段たらしめるのは
当人で充分である。
その人を見て、また接するとすれば
ついぞ企ての類いでなく
聞き手話し手の類いに収まるだろう。

自由によって
固まったように見えるパターンは
ただの煩雑さの忌避なのか、
取り逃した新規の身代わりなのか。
そしてそこに新しさがないと誰が言えるのか。
結果そこへ至ったダイナミクスを
簡便な怠慢だと言い放つのには無理がある。
その自然な適応に含まれるものは多い。
由来する性質は社会的なヴェールで馴らされながら
確かに足跡をのこしている。

覗くべきは因果の始末その解明でなく
行為の些末その表面、
一端でしかないがその実際に接する部分の
有り様でないか。
想像を発する貴重な点として
信頼に足るのは未形容な現在であり
形づくられた像ではない。

ななめのレインボー

高校生の兄は眼を描く。

追加の木を切る。

出来上がった木を新聞紙でくるみ
持ち帰る。

新聞を切り抜いて
それをどこかに貼ろうとかいう途中で
公園に誘われ、
ミコシーを置いて
テンハルカイト共々
2日目の風景。

木登りにいそしむ
得意なテンはデカすぎる木に
手掛かりを見つけず
早々に跳ね返される。
次のほどよい木に付き、
先々の細枝まで
上がり尽くそうと
誇らしい声が
緑の茂みの中から聞こえる。

隣に似た木にイトとハルカもあがる
挟まる足。
さあと野生の好奇に乗せられて
ひょいとあがる身に
小さな笑顔。
どちらが高いんだと聞かれる。
それぞれが樹上の茂みに収まり
すぐ隣の様子も見えはしないのだ。

接戦だと聞けば、まだまだと
登りつめるテン。
イトは横に伸びる主枝を進むも
標高を稼げない。

さあ俺も行こうか。
足が挟まる。
どれどれ、これでも
手足を伸ばして力を込めて
長い分重い体を、それでも
ある意地のような筋肉で
押し上げてみようか。
選び取る枝の太さや可能性を
見ながら、こういう興奮を
遊びというのか
はやる気の勢いを
くまなく揺れる視界と
身体の熱に感じる。

折れるかもしれないねと言う声
折れないよという声

とりつく枝のもうこれ以上はという所で
やはりしかし
そこからテンの姿も見えず
ここがどれぐらい高いかなんて
わからないのだ。

ただやれる事をやった樹内の景色を見下ろして


ナツメテんタルホが現れる。

ダブルテンの説明を軽くしたのは木の上。
ゆっくりとおりる。
樹上の人たち
次いでナツメテんも登る。
あの興奮は人を惹きつけるらしい

鬼ごっこ
走る。
追われながら、誰かの所へ向かう。
鬼をプレゼントするような気持ちで
巻き添えラン。
嫌がられる。

樹上のナツメを見つける。

久しく追われない場合は
コンクリの山の上で声をあげる。
まんべんなく追うのが鬼の使命である。

コンクリ山のすそ野、十字に通った土管がある。
逃げ込めば、それは手の出しにくい砦。
鬼は4人もいない。
タルホとハルカが籠城の構え
どちらが先か知らないが、小石が飛ぶ。
内から外へ、外から内へ、
ナツメとテんが土管の脇で何やら企んでいる。
この場合、内が不利だ。
四方から来る石を中央でくらう。
こちらも空いている土管口へこっそりと回り
小さな石を滑りこませた。
さあ、段取りを組んだ一斉攻撃はその牙を
勢い立ててしまう。
当たった声がする。
土管から出てくるタルホ。
痛い、当たったと抗議。
立ち過ぎた牙は平穏を一線突いて破る。
大丈夫かと聞くが、その感情は
一際戻れぬ所まで上がったらしく
不満を声に身体に示しながら
公園から出て行くように歩いていく。
その力強さに傷の大きいわけではないと知れるが
反面、胸の内に小さくない動き
その後を追いかける。

ただ黙ってあとをついていくと
こちらを振り向くので声をかける。
足元にあった砂利を無鉄砲につかんでは投げて来るタルホ。
その様子に少しの余裕を見て、
少し安心をして
先を歩くタルホの背中と二、三話す。
公園から皆も続いて帰って来る。

スナックへ帰り、皆の中
二階へ、外へ、感情をぶつけるように
足を強く踏んで行き交う。
タルホ母は驚き、皆もどうしたと気づく。
事情を説明し、タルホ母があとを追って
すまない夕暮れ。
2日目の終わりに円満でないことを
味わい、跡を引く白波のように
すっと残る色と休憩室。

ホワイトボードは丸バツ三角五目並べ
テんがこの頃開発した遊びは
人数に合わせて盤も広がり
縦横ナナメの3つ続きを取り合う。

ナギが到着したのは夜も更けた頃
抜け殻の休憩室に母と入り
渡すクレパスや紙を静かにはね返す。
こちらに目もくれず、黙ってまだ開かぬ扉のように。
その脇でひとまず絵を描き、色並ぶ道具を紹介する。
紙に浮かぶ像の欠片を代わって動かす。

時より手に持って鋭く動かす色鉛筆の
紙に当たった所を指差す。
乗った色と線から続くように
新しい気持ちは徐々に表で身体を動かして、
次の紙を求めた。

始まるのは戦い。
戦士が居る。武器を持って、
2人目が出てきたら、これはいい方
悪い方と呼ばれる。
船に乗り戦う。
大きな大きな船が現れる。
攻撃は鋭い動きで鉛筆が動く。
見て!と渾身の場面。
往復する線が力を示し、
船もろともか、という攻勢にも
戦士は倒れない。

休憩室にはルージュを引いたママが来て。
カツラを被っている。
机の斜向かいに座った彼からは
時々言葉をもらう。
戦いは続く、
九死に一生を得ながら
ほぼ互角か、果たしてどちらが
勝ったのだったか。
時よりやって来る客人とことばを交わす内、
その隙に戦いを終えたのか、
観客の気が逸れた合間に、
ナギは母の元へ帰った。