2/5
新年

1月は休みだったから
久方ぶりの面々と踊る。
イトが来て、
風呂上りのナツメは二階に居る。
ゆっくりと始まる。

買って来たマッキーを手に取り、
とりあえず紙に、今口に出したことばを書いてみたり
買って来たスティックのりを手に取り、
色紙の一枚を貼ってみたり
その上両角がちぎれているところに
ツノヲ生やしてみたり、
赤い紙だったからもう鬼にしか見えないと思って
けれど犬のような顔で
イトと笑った。

おやつにもらったドーナツを
A4紙の包装紙に描くと
ちがう、と言って横にイトがもうひとつかく。

ナツメ母は2階の息子に気づき
もう時間ですよと
一閃吼える。
轟いた2階から参加者あらわる。

フィンガービスケットと実線の妙
組み合わせて+とか-、=
算数かと思いきや、円とか出てくる。
置いてもイトに食べられる。
こっちも食べてやる。

テんノんは遅れてやってくる。
いつものように
軽く息を切らせて
その近い距離がかえって
身体を使わせるように
我が家から毎度走ってくるのだろうか。

ノんがカバンから取り出す新聞の束。
そういう事か。
勝手に思い出したコラージュ
全体でそれを共有し、
ハサミと糊が要る。

はい、かこいくんと
ナツメがMOXを渡す。
ローマ字カタカナ日本語
気になる気に入った語句を
見付けだす。
次は僕もそれをしたい。
切り出された片々を貼りつける
仕立てる仕事が間に合わない。
切り切る一向がヒクヒク笑っているように
非常に湧き立つ愉しみは何だろう。
切りはなされた言葉への想像
あたらしく組み合わされた意味
それはありえないほどの段差を
まるでなかったことのように繋げる
脳みその中の遊びかもしれない。

使いたい文句があちこちに散らばっていて、
集中しなければ一枚を仕上げることすら難しい。
ピタッと瞬間にできあがるタイミングとか
リズムをはずれると逡巡の谷に陥り
持て余す一字一句に途方に暮れるのだ。

サッと並べたその位置が抜群にできあがっていても
その通りに貼り付けることなどできない。
固定できない感動を
形にするというとき
一瞬で過ぎ去る今をどのように掴むのか。
その流れる遊びは、定めるより速く
身体を通じて感じられ
発せられる。

イトに貼りつけてもらう。
これか、という組み合わせと
ざっくりの位置でもって
貼っておくれと右に渡す。

好きなの切ってと頼む。
4コマまるごと来る。

組み合わせの助言ももらう
さっと早くこれとこれ
よし 貼るのね。

さあディレクター募集。
ノんもニヤついた切り抜きを経て
一枚を仕上げる。

頭髪関係の作品が豊富な夜。

想像はなぞるように再現を繰り返す。
頭の中で切り口を馴染ませるように仕上げる技術は
何かをつなげるようでいて
何かが隠される自家製の繕いでもある。

なにかをつくるというのは、意思であり
望みであり、別れである。

そこをまたタイムラプスもしくは
新しいipadにはスローモーションがある。
今度は早く動いてやる。
スローにできるもんならしてみなされ。
切り抜き続ける所作の嵐。
せっかくですから身振り手ぶり
シュラシュラと腕だけ謎の動き
早く動くという使命感から
僕とノんとテん。
テんの手先はすごくユラユラと滑らかな動き。
これはスローになったとして、
怪しい一団だ。

映像のテーマについて
思いつきの会議
ノんはストーリー仕立てを希望
ナツメはブラックアウトを利用しての場面転換劇を主導。
瞬発的な実行が優先されたのか、
ストーリーテリングの段はひとまず置いて
場面スイッチムービー
決まった画角で各自位置取りを調整。
遮る板で場面転換、
暗転の間に出たり入ったり
もはやスローである意味がはたして
わからないような気もする
映像集団。

声が恐竜になる。という情報をもとに、
いや、声がゴジラになるから
恐竜の声をしたのか。
とにかくいつもの肉声がスローになると
もうけだものと言いますか
モンスター、宇宙人の類いに
ど低音のうめきが続くのです。
試しに高速に高音でクッチャベッテみても
もう何を言っているかわからない
どスローリー。

しまいには金切り声がそれぞれにあがり
けたたましい。

かと言って、それがうまく変換されて
スローの中でスローでないというような
ことは起こらなかった。

よく起こったのは
その辺りの新聞紙を拾い上げては放り投げるという
スローモーション。
おかげでもう部屋中がニュースペーパー。
時より超熟が飛んだり
丸めた紙が飛んだり
ナツメがラーメンを食べたり
羽ばたいたり
通常の映像から途中いきなり
スローに切り替わり
最後また通常に戻っていく段取りで
何故か録画されていたipad
容量が逼迫しスローは体によくなかったかもしれない。
ギガバイト

新聞ワードが切り貼られた折り紙は万国旗のように
梁にテープでとめられて
ノんが今日の成果を一覧にしている。

夕食の肉団子スープを食べながら
これがいい。あれがいい、と
ナツメ母の批評の会。
イトの手が人気。