なし崩し的発生

あの日は特に何の気なく日曜市へ行ったのだったか。
貴重な友人が居てくれるのをいい事に
たむろしていたらそれとなくやはり
自然今日はやらないのかという事になり、
じゃあやろう、と即興的に合点して
ぶしつけな当日開催が始まる。

だから何をしたかと言われて
家の周りで缶ケリをした記憶である。
あれはトマト缶だったろうか。同じものがいくつか発掘された。
いやあれはあの日だったろうか。
コースケがソースケと来た日はあの日だったろうか。
母屋隣の記憶が混ぜられて一体となりつつあるような
微かな胸の中の年輪を、指でなぞるような確かめも
まるで不確かだ。


総勢10余名か、鬼を缶の傍に残し、広場は管轄外
母屋側の一帯に身を潜める。
物陰から様子を伺い、その声とちらつく姿に状況を知る。
こちらから見えるとは、すなわち向こうから見える。
茂みの上ギリギリから視線を投げようにも
その頭頂部ははっきりと見せているわけで、
頭のてっぺんに目がついていれば良かった。
そういう潜望鏡を持たない身で、なるたけ
こちらからは見るが、向こうからは見えないという
スパイシーな作戦を随時遂行しなくてはいけない。
音を聞き、そうだ、捕まった仲間が実況中継のように
鬼の動向を叫んでくれている。
それを聞き入れて、刻々と動き続けるピンチもしくはチャンスを
サバンナのチーターのような集中でもって感じとらなければならない。

一見危なっかしい缶のそばの納屋に入りて
最前線の裏をかいたような緊張と興奮の物陰。
対角線の同士と目が合い、笑む脇に鬼の声

ナベグツグツの遊び
何の音?
前フリがしっかりある。
その儀式を次々にハイテンポで守り
ガタガタガタ、ガタガタガタ
何の音?
風の音。
うずくまった皆と、音を立てる一人。
ガーターガッタガーター、ガッタガッタガーガー
リズムむやみに刻んで、聴いて下さい。
新曲。
何の音?
新曲。
それでもって、満を持して
ある時発表します。
オバケのオトーーー!
そういった恐るるトーンがスイッチなのです。
抜き差しならない瞬間なのです。

ワーーーー!
逃げまどう人々。
はい、そこで音担当交代します。



遠方から来た男子は広場からワイルドな群れへ

新しき年長の参加者はおもむろにその大きな身体をこちらに預け
膝の上に乗るにはまさにベテランの風情で屈託ない笑顔を見せる。
その気勢にワイルドな若手は若干の順応状態。
気圧差を確かめるように静かに観察している。

自然は分け隔てなく、しかし僕の方に体重を掛け
広場でも尻にしかれうずくまり、小高い乗客の下
大人界隈、店先で何をしているのか。
踊る一団は新しい風体を持って闊歩している。

コースケは3兄弟らしい、皆スケが付く
テンとコースケはワンピースの知識を
奥深くまで分け入るような専門家の口調でもって
話し合っている。

ハルチンの歌が聴こえて、管轄外へ
缶蹴りは堂々と中座して
まあぼんやりと広場に立つ。

入り組んだ、人と遊びのさなかで
その形とか決まりを掴んだり放したり
それは自分で決められるのだと、
ほんの小さな世界で噛み締めた